映画『トールキン 旅のはじまり』:中つ国(ミドルアース)を生んだJ・R・R・トールキンの友情と愛の物語

映画『トールキン 旅のはじまり』(原題:Tolkien)は、世界的なファンタジー文学の金字塔『指輪物語』や『ホビット』の原作者であるJ・R・R・トールキンの若き日々の半生を描いた感動的な伝記映画です。物語は、彼の孤独な少年時代から、詩や言語を愛する仲間たちとの出会い、そして生涯の伴侶となる女性とのロマンス、そして第一次世界大戦の過酷な経験を通して、いかにしてあの壮大な冒険物語の着想を得たのかという秘密に迫ります。監督はドメ・カルコスキ。主演はニコラス・ホルト。彼の豊かな想像力と、深い友情、そして愛が、後の「中つ国」の創造へと繋がっていく過程を、詩的で美しい映像で描きます。この作品は、単なる伝記映画ではなく、偉大な物語の誕生の原点を探る旅でもあります。
概要・原題
- 原題: Tolkien
- 公開年: 2019年(アメリカ/イギリス)
- 上映時間: 約112分
- ジャンル: 伝記、ドラマ、ファンタジー
- 監督: Dome Karukoski(ドメ・カルコスキ)
- 特記事項: J・R・R・トールキンの遺族は、この映画の制作に協力していませんが、その若き日の感情的な成長と、創造性の源泉に焦点を当てた作品として広く受け入れられています。
あらすじ
孤児となった若きジョン・ロナルド・ルーエル・トールキンは、英国の古典的な学校で学ぶ傍ら、生涯の友となる四人の仲間たちと出会います。彼らは「T.C.B.S.」(Tea Club and Barrovian Society)と名付けた秘密のクラブを結成し、詩や芸術、そして世界を変えるという野心を共有します。また、トールキンは孤児院で出会ったエディス・ブラットと恋に落ちますが、後見人によって引き裂かれます。友情、愛、そして言語創造への情熱に燃えるトールキンの人生は、第一次世界大戦の勃発によって一変します。彼は壮絶な塹壕戦に参加し、そこで目にした地獄のような光景が、後に『指輪物語』に登場するモルドールや、数々のクリーチャーの着想源となっていきます。
キャスト
- J・R・R・トールキン: Nicholas Hoult(ニコラス・ホルト)
- エディス・ブラット: Lily Collins(リリー・コリンズ) - トールキンの妻であり、彼にとっての重要なミューズ。
- 若きロナルド: Harry Gilby(ハリー・ギルビー)
- クリストファー・ワイズマン: Tom Glynn-Carney(トム・グリン=カーニー) - T.C.B.S.のメンバー。
- ディーン・フランシス神父: Colm Meaney(コルム・ミーニイ) - トールキンの後見人。
主題歌・楽曲
- 特記事項: トーマス・ニューマンが音楽を担当し、トールキンの繊細な内面と壮大な戦争の情景を美しく彩っています。彼の音楽は、ケルト音楽や英国の伝統的なメロディを取り入れつつ、トールキンの創造的な世界観が芽生える瞬間を、叙情的に表現しています。
受賞歴
- 特記事項: 大きな賞の受賞はありませんが、その高い芸術性と、ファンタジー文学の偉大な原作者の生涯を誠実に描いた点が高く評価され、特に伝記映画や歴史ドラマ部門でノミネートされるなど、批評家から好意的な評価を受けました。
撮影秘話
- トールキン氏の遺族の非協力: トールキンの遺族は、この映画が彼の人生の物語を「許可なく」描いたとして、公式に距離を置いていますが、監督はトールキンの人生に関する公開資料に基づいて誠実に制作したと述べています。
- 言語の創造: 劇中では、トールキンが幼少期から生涯を通じて取り組んだ「言語の創造」に対する情熱が描かれています。ニコラス・ホルトは、トールキンの言葉への愛を表現するために、発音やアクセントに細心の注意を払いました。
- 戦争シーン: 第一次世界大戦の塹壕戦の描写は、トールキンの経験が彼の作品に与えた影響を強調するため、極めてリアルかつ象徴的に撮影されました。
感想
この映画は、『指輪物語』のファンであるかどうかに関わらず、偉大な芸術家がいかにしてその創造性を開花させたのか、という点に深く感動を与えます。特に、トールキンと仲間たちが交わす、未来への希望に満ちた友情の誓いや、エディスとの純粋な愛の物語は、観客の心に強く響きます。戦争の描写は重々しいものですが、その地獄のような経験こそが、彼に「中つ国」という救いの物語を生み出す原動力を与えたことが伝わってきます。ニコラス・ホルトの繊細な演技が光る、詩情豊かな伝記映画です。
レビュー
肯定的な意見
・「『指輪物語』の隠された原点を知ることができた。トールキンとエディスのロマンスが美しく感動的だ。」
・「ニコラス・ホルトとリリー・コリンズの演技が素晴らしい。特にホルトはトールキンの内面的な葛藤を見事に表現している。」
・「映像が詩的で美しく、壮大なファンタジーの世界が、トールキンの現実の経験から生まれたことがよく分かる。」
否定的な意見
・「トールキンの生涯のハイライトを駆け足で追っているため、一つ一つのエピソードが浅いと感じる部分があった。」
・「ファンタジー要素が少なく、伝記ドラマとして地味に感じるかもしれない。」
考察
「中つ国」の起源と実体験の投影
映画は、トールキンの現実の経験が、後のファンタジー作品にいかに投影されたかを考察する鍵となります。第一次世界大戦の荒廃した塹壕の風景は、モルドールやゴンドールの荒廃した土地のイメージと重なり、また、トールキンが仲間たちと築いた強い友情は、ホビットや旅の仲間たちの絆の原型として機能していると解釈できます。エディスとの愛は、トールキンが創造したエルフの王女ルシエンと人間の英雄ベレンのロマンスにインスピレーションを与えたとされています。
言語の力が創造へ繋がる
トールキンの人生において、彼の専門分野である言語学と、クウェンヤ語やシンダール語といった架空の言語創造への情熱は欠かせません。この映画は、彼にとって「物語」は、まず「言語」があって初めて生まれたものであり、言語が世界観を構築する力の源であったことを示唆しています。
※以下、映画の結末と物語の根幹に関する重大なネタバレが含まれる可能性があります。
未視聴の方はご注意ください。
ラスト
映画は、トールキンが第一次世界大戦から生還し、エディスと再会して結婚し、オックスフォード大学で教鞭をとりながら、子供たちに物語を語り始めるシーンで静かに幕を閉じます。戦争のトラウマを乗り越え、彼は自身の経験と想像力を融合させ、『ホビット』の有名な冒頭の一文「地面の穴にホビットが住んでいた」を書き出す瞬間が示唆されます。これは、全ての苦難と愛の経験が、ついに世界的なファンタジー文学の創造へと結実したことを象徴する、感動的な結末となっています。
視聴方法
DVD&Blu-ray情報
まとめ
映画『トールキン 旅のはじまり』は、偉大なファンタジー作家の若き日の葛藤、友情、そして愛を詩情豊かに描いた伝記映画です。彼の現実の経験、特に第一次世界大戦の壮絶な記憶と、仲間たちとの絆が、いかにして『指輪物語』という不朽の物語の誕生に繋がったのかという創造の秘密が解き明かされます。ファンタジー文学の読者だけでなく、創造の原点に興味がある全ての人にとって、感動的な体験となるでしょう。
映画のジャンル
伝記、ドラマ、ファンタジー

