海外ドラマ『ストレイン 沈黙のエクリプス』:ギレルモ・デル・トロが放つ、絶望と戦慄のパンデミック・サバイバル

『ストレイン 沈黙のエクリプス』は、『パシフィック・リム』や『シェイプ・オブ・ウォーター』で知られる巨匠ギレルモ・デル・トロ監督が、チャック・ホーガンと共同で執筆した小説『ザ・ストレイン』三部作を自らドラマ化したSFサスペンス・ホラーです。ニューヨークに着陸した旅客機内で発生した謎の怪死事件を発端に、未知のウイルスによる「ストリゴイ(吸血鬼)」の感染爆発と、人類存亡をかけた戦いを描きます。従来の美形なヴァンパイア像を覆す、醜悪で恐ろしいクリーチャーデザインや、科学捜査と古来の伝承が交錯するストーリー展開が魅力の超大作です。
概要・原題
- 原題: The Strain
- 放送期間: 2014年 - 2017年
- シーズン数: 全4シーズン(完結)
- ジャンル: ホラー、SF、ドラマ、スリラー
- 企画・製作総指揮: ギレルモ・デル・トロ、チャック・ホーガン、カールトン・キューズ
- 製作国: アメリカ合衆国
- 放送局: FX
あらすじ
ベルリン発の旅客機がニューヨークのJFK空港に着陸した直後、システムが完全に停止し、音信不通となる事態が発生します。CDC(疾病予防管理センター)の疫学者エフラム・グッドウェザー博士(通称エフ)とチームが機内に入ると、乗客乗員200名以上が何の外傷もなく死亡しており、わずか4名だけが生存していました。エフたちは当初、未知のウイルスのパンデミックを疑いますが、事態は科学の常識を超えた方向へと進んでいきます。
シーズン1:感染の始まり
検視局に運ばれた遺体が次々と起き上がり、長い舌のような器官で人間の血を吸う怪物「ストリゴイ」へと変貌し始めます。この事態を予見していた質屋の店主でホロコースト生存者のエイブラハム・セトラキアン教授は、これが古代から生き続ける吸血鬼の王「マスター」の仕業であることをエフに警告します。エフは当初科学的な説明を求めますが、変わり果てた元妻や同僚を目の当たりにし、セトラキアン、害獣駆除人のフェット、ハッカーのダッチらと共に、マスターを倒すためのチームを結成します。
シーズン2:闇の拡大
感染はニューヨーク全土に拡大し、街はパニックに陥ります。エフはウイルスの拡散を止めるため、感染者だけに作用する生物兵器の開発を急ぎます。一方、セトラキアンはマスターを殺す方法が記された古書「オクシド・ルーメン」を探し求めます。マスターは新たな器(肉体)を手に入れ、より強大な力を得ようと画策。エフの息子ザックの親権を巡る争いも絡み、人間関係は複雑化していきます。マスターの背後にいる協力者たちの存在も明らかになり、戦いは激化します。
シーズン3:崩壊する都市
政府や軍の介入も虚しく、ニューヨークは隔離され、ストリゴイの支配下に置かれつつありました。エフたちは生物兵器の効果が薄れていることに焦りを感じます。セトラキアンはついに「オクシド・ルーメン」を解読し、マスターを封印する方法を見つけ出しますが、マスター側の反撃も激しさを増します。そんな中、マスターに洗脳されたエフの息子ザックが、怒りと憎しみからあるスイッチを押し、ニューヨークで核爆発を引き起こしてしまいます。
ファイナル・シーズン(シーズン4):沈黙のエクリプス
核爆発によって巻き上げられた灰が太陽光を遮り、世界は永遠の薄暗闇に包まれる「核の冬」が到来しました。これは日光に弱いストリゴイにとって絶好の環境でした。それから9ヶ月後、世界は「パートナーシップ」と呼ばれる組織によって支配され、人間は血液を供給するための家畜として管理されていました。離れ離れになっていたエフたちは再び集結し、人類に残された最後の希望を懸けて、マスターとの最終決戦に挑みます。
キャスト
- エフラム・グッドウェザー(エフ): コリー・ストール
- エイブラハム・セトラキアン: デヴィッド・ブラッドリー
- ヴァシリ・フェット: ケヴィン・デュランド
- ダッチ・ヴェルデル: ルタ・ゲドミンタス
- ノーラ・マルティネス: ミア・マエストロ
- アイヒホルスト: リヒャルト・サメル
- ザック・グッドウェザー: マックス・チャールズ
- マスター: ロビン・アトキン・ダウンズ(声) 他
主題歌・楽曲
- 音楽: ラミン・ジャヴァディ(『ゲーム・オブ・スローンズ』『ウエストワールド』なども担当)
- 特記事項: 不安を煽る重低音と、緊張感を高めるストリングスが特徴的なスコアが、絶望的な世界観を強調しています。
受賞歴
- サターン賞: テレビ部門などで複数のノミネート
- 放送映画批評家協会賞: 最優秀助演男優賞ノミネート(デヴィッド・ブラッドリー)
撮影秘話
- ギレルモ・デル・トロ監督は、吸血鬼(ストリゴイ)のデザインにおいて、従来の「牙」ではなく、喉から飛び出す長い触手のような器官で吸血するという生理的嫌悪感を催す斬新な設定を採用しました。
- エフ役のコリー・ストールは、シーズン1ではカツラを着用していましたが、シーズン2からはスキンヘッドになり、キャラクターの精神的な変化とやつれを表現しました。
感想
単なる吸血鬼ものではなく、ウイルス感染によるパンデミック・パニックという現代的なアプローチと、古来の吸血鬼伝説を融合させた点が非常にユニークです。特に、デル・トロ監督らしいクリーチャーの造形は不気味かつ秀逸で、視覚的なインパクトは絶大です。物語が進むにつれてスケールが大きくなり、一都市のパニックから世界規模の終末劇へと変貌していく展開には圧倒されます。主人公エフが決して完全無欠のヒーローではなく、アルコール依存症や家庭の問題を抱え、判断ミスも犯す人間臭いキャラクターである点も、物語にリアリティを与えています。
レビュー
肯定的な意見
・「クリーチャーデザインが最高に気持ち悪くて怖い(褒め言葉)。ホラー好きにはたまらない。」
・「害獣駆除人のフェットが頼りになりすぎてカッコいい。彼が実質的な主人公と言っても過言ではない。」
・「セトラキアン教授の過去と執念を描いたストーリーラインが重厚で魅力的。」
否定的な意見
・「エフの息子ザックの行動にイライラさせられる。ドラマ史上最も嫌われた子供キャラの一人かもしれない。」
・「シーズン中盤で少し中だるみを感じる部分がある。」
考察
科学とオカルトの融合
本作では、ストリゴイを「超自然的な怪物」としてだけでなく、「寄生虫による感染症」として科学的に分析しようとするエフの視点と、古代からの伝説として対峙するセトラキアンの視点が交錯します。最終的に人類を追い詰めるのが、科学の産物である「核兵器」であったという皮肉は、科学技術の暴走と人間の愚かさを象徴しているようにも見えます。
「愛」の二面性
マスターは、人間が持つ「愛」や「執着」を利用して支配を広げます。感染者が愛する者の元へ帰ろうとする本能(帰巣本能)を利用して感染を拡大させる設定は、愛が弱点になり得ることを残酷に描いています。一方で、エフたちが最後まで戦い抜く原動力となったのもまた、仲間や家族への愛でした。
※以下、ドラマのラストに関する重大なネタバレが含まれます。
未視聴の方はご注意ください。
ラスト
最終話では、マスターを倒すための最後の作戦が決行されます。フェットたちは核弾頭を使ってマスターを地下深くに誘い込み、爆破して葬り去る計画を立てます。しかし、起爆装置が故障し、誰かが手動で爆破しなければならない状況になります。エフは、マスターに取り憑かれた息子ザックと対峙します。ザックは最後の瞬間に父親への愛を取り戻し、マスターを押さえ込んで道連れにすることを決意します。エフもまた、息子と共に残ることを選び、核爆弾を起動させます。
大爆発と共にマスターは消滅し、全土を覆っていた雲が晴れ始め、久しぶりに太陽の光が地上に降り注ぎます。ストリゴイたちは日光によって焼き尽くされ、長い戦いは人類の勝利で幕を閉じました。生き残ったフェットやダッチたちは、エフとザックの犠牲を胸に、復興へと歩み出します。ラストシーンでは、平穏を取り戻した街を歩くフェットの姿が描かれ、希望に満ちた結末となります。
視聴方法
DVD&Blu-ray情報
全シーズンのDVDおよびブルーレイBOXが発売されています。特典映像としてメイキングや未公開シーンも収録されており、作品世界をより深く楽しむことができます。
まとめ
『ストレイン 沈黙のエクリプス』は、ギレルモ・デル・トロのダークな美的センスと、終末世界のスリルが融合した傑作ホラー・アクションです。一度見始めたら止まらない中毒性があり、絶望的な状況下で繰り広げられる人間ドラマも見応え十分です。吸血鬼ものやパンデミックものが好きな方には特におすすめのシリーズです。
映画のジャンル
海外ドラマ、SFホラー、パニック、サスペンス、アクション
- ストレイン
- ギレルモ・デル・トロ
- ヴァンパイア
- パンデミック
- FX

