映画『ゾンビのジョンおじさん』:J・A・ルッソが放つ前代未聞のゾンビ人権コメディ!まさかの機能回復と過激な社会風刺を徹底レビュー

もしもゾンビが約40年以上のリハビリの末に理性と会話能力、さらには愛や欲望といった人間の生活機能まで完全に取り戻してしまったら。映画『ゾンビのジョンおじさん』(原題:My Uncle John is a Zombie!)は、そんな奇想天外なシチュエーションを徹底的なブラックユーモアで描き出した異色のホラーコメディ作品です。メガホンを取ったのは、ゾンビ映画の歴史を創り上げた偉大な古典『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』で共同脚本と最初のゾンビ役を務めたレジェンド、ジョン・A・ルッソと、ロバート・L・ルーカス監督の2人。自身が作り上げたジャンルを、自らの主演でパロディ化するという驚きのセルフオマージュ精神が詰め込まれています。今回は、本作のユニークな設定、往年のホラーファンを狂喜させたキャスティング、そして最後に巻き起こる大肉食パーティの結末まで、詳細に解説していきます。
概要・原題
- 原題: My Uncle John is a Zombie!
- 公開年: 2017年
- 上映時間: 82分
- ジャンル: ホラー、コメディ、SF
- 監督: ロバート・L・ルーカス、ジョン・A・ルッソ
- 脚本: ジョン・A・ルッソ
- 原作: ジョン・A・ルッソ
あらすじ
ゾンビ・アポカリプスが発生し、今でも日常的にゾンビが徘徊し、それらを狩るゾンビハンターの存在が当たり前となった近未来のアメリカ。そんな不気味な世界で、美しい姪のサイファイと、おっちょこちょいな警備員の甥であるオスカーによって、約40年以上もの間、人知れず自宅の地下室で匿われ続けてきた一体のゾンビがいました。その名も、ジョンおじさん。彼らはジョンおじさんに根気強くリハビリを施し、コミュニケーションを教え続けてきました。その甲斐あって、ジョンおじさんは狂暴な肉食の衝動に固執することなく、驚くほど滑らかな会話能力、豊かな思考力、ユーモア、さらには愛や性的な衝動といった人間のあらゆる機能を取り戻すことに成功したのです。やがて彼ら家族がジョンおじさんの存在を世間に公表すると、テレビなどのメディアの取材が殺到。彼は一躍世界的な時の人となり、ゾンビのインフルエンサーとして有名になります。テレビの生放送に出演したジョンおじさんは、ゾンビの人道的権利や倫理的な待遇の必要性を声高に主張し、ついにはゾンビ専用の愛の潤滑油であるゾンビ・ルーブなどのオリジナル商品を宣伝して大金と富を手にしていきます。しかし、テレビで一躍スーパースターとなったジョンおじさんの存在を認めない過激なゾンビハンターのギャング集団が、彼を不快に思い、スポーツハンティングの格好の標的にしようと誘拐計画を立てて彼の前に忍び寄るのでした。
キャスト
- ジョンおじさん: ジョン・A・ルッソ
姪や甥の手によって40年以上リハビリを受け、人間の理性と会話能力を取り戻した奇跡のゾンビ。テレビを通じてゾンビの権利を訴え、一躍大スターとなります。 - サイファイ: サイファイ
ジョンおじさんを長年自宅で守り続け、愛情を込めて人間の感性を思い出させた美しく賢い姪。 - オスカー: ゲイリー・リー・ヴィンセント
ジョンおじさんを献身的に匿ってきたものの、どこか頼りなく、ドジを連発してしまう警備員の甥。 - ホッチキス牧師: ラッセル・ストライナー
テレビ番組でジョンおじさんと対談することになる、ゾンビの脅威を説くゾンビハンターの牧師。演じるのはオリジナル版『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』でジョニー役を演じた映画界のレジェンドです。 - ジュディ: デビー・ロション
ジョンおじさんの身辺を脅かす、あるいは周囲で独特の存在感を放つ狂信的な女性。 - ジェーン・スマート: サラ・フランス
テレビの生放送でジョンおじさんへの密着取材や鋭い質問を行うジャーナリスト。 - 保安官マクレランド: ジョージ・コサナ
ゾンビ対策に奔走する冷徹な保安官。1968年のオリジナル版と同じ役どころを演じ、強い存在感を発揮します。
主題歌・楽曲
- 音楽: ゲイリー・リー・ヴィンセント
- 特記事項: 低予算ホラーコメディの作風に寄り添う、陽気で少しチープなエレキギターや、80年代を彷彿とさせるシュールなシンセサイザーのBGMが随所に使用されています。ジョンおじさんがテレビの生放送で自らの権利を主張し、ゾンビ用の関連グッズを売り出す滑稽なシーンや、後半のハンターたちとの大混乱のドタバタシーンを非常にコミカルに盛り上げ、作品のブラックなユーモアを引き立てています。
受賞歴
- マッド・モンスター・パーティー・フィルムフェスティバル 公式選出作品
- 特記事項: 世界的なメジャー賞の獲得はありませんが、ゾンビ映画の生みの親とも言えるレジェンドたちが集結して作り上げた究極の自主制作セルフパロディ映画として、世界各地のカルト映画祭やゾンビファンのコミュニティ、映画コレクターたちの間で大きな称賛と熱狂的な拍手を持って受け入れられました。
撮影秘話
- 本作で監督、脚本、そして主役のゾンビであるジョンおじさんを演じているジョン・A・ルッソは、ホラー映画のバイブルである『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』の共同執筆者であり、作中でタイヤレンチで殴られて火をつけられた元祖ゾンビ(墓地のゾンビ)を演じた張本人です。約50年の時を経て、自らが喋るゾンビとなって主役に返り咲くという壮大なセルフパロディとなっています。
- さらに、1968年のオリジナル版で主人公バーバラの兄ジョニーを演じ、「彼らが来るぞ、バーバラ」というゾンビ映画史上最も有名な名セリフを残して真っ先にゾンビの餌食となったラッセル・ストライナーが、本作ではゾンビハンターの牧師役として出演しています。ゾンビの元祖を作ったメンバーたちが、歳を重ねてまた同じようなお祭り騒ぎのインディーズ映画を自主制作したという、ホラーファン感涙の現場でした。
- 作中でジョンおじさんが大好物の肉として振る舞われる人間の手足などの特殊メイク造形は、限られた低予算の中で工夫を凝らして作られ、キャストたちのアドリブが大量に盛り込まれました。ジョンおじさんの顔の半分がただれて腐敗しているものの、スーツを着こなしてテレビカメラに向かって微笑むメイクは、古典的なグールと現代のメディアスターの融合を表現しています。
感想
本作は、一般的なホラー映画のような心臓が止まるジャンプスケアや、極限状態での脱出劇、本格的なクリーチャー特殊効果を期待して観ると拍子抜けするほどに、終始グダグダでゆるい空気感が漂う極上のB級コメディです。しかし、ゾンビ映画の父であるジョン・A・ルッソ自身が、自分たちが世界に流行らせてしまったゾンビという存在を、メタ視点でこれでもかと笑い飛ばしている姿勢が最高に痛快です。ゾンビになっても高い知性を持ち、人権をテレビで真面目に主張する一方で、自身の広告塔としての立場を利用してちゃっかり大儲けしたり、性的な欲求を爆発させたりするジョンおじさんのコミカルな立ち居振る舞いは、観ていて愛らしささえ覚えます。古典ホラーへの愛あるセルフオマージュを散りばめながら、現代のメディア社会や消費主義を皮肉る視点は非常にユニークで、終始笑いながら鑑賞できる愛すべきゾンビ映画の怪作です。
レビュー
肯定的な意見
・ゾンビ映画の歴史を作ったジョン・A・ルッソやラッセル・ストライナーが元気そうにまたゾンビ映画を作っている姿を見るだけで、映画マニアとしては星5つの価値がある。おじさんの喋り口調や、関連商品をちゃっかり売り出すブラックユーモアが最高に皮肉が効いていて楽しい。
・ゾンビに人権があるのかというテーマを、これほどまでにふざけた視点で描いた作品は他にない。人間の都合でゾンビを害獣のようにスポーツとして狩る人間たちの方が、実は最も強欲で品性がないという、ゾンビ映画の伝統的なメッセージが裏返しになって表現されているのが素晴らしい。
・ホラー映画というよりは完全にバラエティ豊かなダークコメディ。グダグダとした展開やインディーズ映画ならではの緩さが心地よく、映画館ではなく自宅でビールでも片手にのんびりと笑いながら楽しむのに最も適した隠れた名作。
否定的な意見
・ロメロや現代の走るゾンビのような本格的なサスペンス、緊迫感あふれる絶望のシナリオを求めている人にはチープすぎて全くお勧めできない。画面作りもテレビのドキュメンタリー風で非常に平坦であり、好みが極端に分かれるお遊び映画。
・特殊効果やグロテスク描写の出来栄えが非常にチープで、自主制作映画の域を出ていない。ゾンビハンターたちとの追いかけっこもコメディ仕立てでかなり緩いため、ホラーとしてのドキドキ感やゾッとする冷たい恐怖は皆無に近い。
考察
ゾンビの人権と社会風刺:本当のモンスターは誰なのかという逆転劇
本作の最大の魅力は、喋り、考え、さらには愛や欲望を持つようになったジョンおじさんが、テレビの生放送で「ゾンビにも人道的権利と倫理的待遇を」と訴えかけることで生じる、現実社会への冷酷なパロディと風刺にあります。映画の中では、ゾンビが蔓延した世界に慣れきった人間たちが、当たり前のようにゾンビを害獣のようにスポーツ感覚で狩るハンティングクラブを作って楽しんでいます。しかし、ジョンおじさんが極めて紳士的かつ論理的に、テレビの前でメディアや資本主義を味方につけて主張を展開し始めると、彼を金目的で誘拐し、おもちゃとして殺そうとするゾンビハンター(人間)たちの野蛮さと強欲さ、暴力性が際立つようになります。これは、初期のロメロ映画が持っていた「死者よりも生きた人間の方がはるかに強欲で恐ろしいモンスターである」という社会批評を、全く新しい角度から愉快なブラックコメディとして再生させた、実に見事なアプローチです。
ゾンビ映画の歴史とセルフオマージュ:50年の歴史を笑い飛ばす余裕
1968年にジョン・A・ルッソが脚本を書き、彼らが墓場でよちよち歩く死体を生み出してから、映画界は様々なバリエーションのゾンビを作り出してきました。本作はそのルーツそのものであるルッソ自身が、自分の作った死体の設定を自ら破壊し、「会話ができ、性交も可能で、マーケティング能力まで備えたゾンビ」を自演するという贅沢なメタ構造を持っています。オリジナル版を崇高なものとして保護するのではなく、自分たちの遺産を使って徹底的におバカなコメディをやってのけるその映画的余裕こそが、カルト映画ファンの間で絶賛される要因です。往年のキャストが再集結し、昔と同じ名前の保安官やキャラクターたちが老け込んだ姿でバカげた会話を繰り広げる姿は、ホラー映画の歴史に対する極上のセルフオマージュとなっています。
※以下、映画のラストに関する重大なネタバレが含まれます。
未視聴の方はご注意ください。
ラスト
テレビを通じて世界的なセレブリティとなり、富と名声を得たジョンおじさんでしたが、彼の成功を苦々しく思っていた邪悪なゾンビハンターのギャング一味によって、山奥の森にあるハンティング施設へ誘拐・拉致されてしまいます。ハンターたちは、ジョンおじさんを広い檻に閉じ込め、スポーツハンティングの格好の獲物として、追い回して殺害するイベントを企画します。しかし、ジョンおじさんの誘拐を知った姪のサイファイ、甥のオスカー、そしてゾンビの権利を信じるホッチキス牧師たちは、愛するおじさんを救出するためにすぐさま山林へと向かいます。ハンターたちの施設に追いつめられ絶体絶命の危機に陥るジョンおじさんでしたが、彼は自らの高い知性を活かし、周囲に徘徊していたお腹を空かせた野生のゾンビたちを自らの叫び声で統率。ジョンおじさんを救うために現れた味方と、呼び寄せられた凶暴なゾンビたちの大群が、ハンターたちの施設を完全に逆包囲します。立場が逆転したハンターたちは逃げ惑うものの、ゾンビたちによる一斉攻撃が開始され、かつて死体を玩具のように扱っていたギャングたちは一人残らずゾンビに引き裂かれ、大肉食パーティ(ゾンビの大乱舞)の餌食となって完璧に撃退されます。こうして無事に生還を果たしたジョンおじさんは、自らを救ってくれた仲間や姪、甥たちとともにメディアの前に再び大々的に凱旋。記者たちのフラッシュを浴びながら「ゾンビにも愛と尊厳を」とユーモアいっぱいにスピーチを行い、自身がプロデュースする潤滑油を売りさばきながら、以前にも増して逞しく、そして幸せそうに人間社会で共存を続け、世界を変えていくという、この上なくハッピーでお気楽な結末で物語は幕を閉じます。
視聴方法
DVD&Blu-ray情報
映画『ゾンビのジョンおじさん』のDVDパッケージは、インディペンデント系のホラー販売サイトや輸入盤ディスク、あるいは特定の映画配信コレクターズパッケージとして、バーニング・バルブ・パブリッシングなどの海外レーベルより販売されています。ディスク内には、ジョン・A・ルッソが『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』の撮影当時の思い出と今回のふざけたゾンビ役へのこだわりを語るインタビュー映像や、おじさんの腐敗メイクを施す過酷な裏舞台を記録したビハインドザシーン、そしてキャスト全員が笑いをこらえ切れなかったNGテイク集などの、ファン必見の特典映像がたっぷりと収録されています。
まとめ
『ゾンビのジョンおじさん』は、ゾンビというモンスターを誕生させた生みの親たちが、愛を込めてゾンビジャンルそのものを愉快にセルフパロディ化した、愛すべき究極のカルト・ホラーコメディです。走るゾンビや最新のCGによる恐怖とは無縁ですが、人間並みに喋り、愛を求め、潤滑油を宣伝するジョンおじさんの強烈すぎるキャラクターと、過激なゾンビハンターをゾンビの肉食パーティでユーモラスに壊滅させる勧善懲悪なバッドエンドならぬハッピーエンドは、観る者に清々しい笑いと映画への情熱を届けてくれます。肩の力を抜いて、レジェンドたちの大暴れをぜひ各種配信サービスやディスクで楽しんでみてください。
映画のジャンル
ホラー、コメディ、SF
- ゾンビのジョンおじさん
- My Uncle John is a Zombie
- ジョン・A・ルッソ
- ラッセル・ストライナー
- ホラーコメディ
- Jホラー
- ゾンビハンター
- セルフパロディ
