映画『アビゲイル クローズド・ワールド』:謎の病と巨大シールドに覆われた世界で、少女が見つける魔法と真実の物語

2019年に公開されたロシア製作のディストピア・ファンタジー映画『アビゲイル クローズド・ワールド』(原題:Abigail)は、謎の病が蔓延し、巨大な特殊シールドによって外界から閉ざされた都市を舞台に描かれます。病の感染拡大を防ぐため特殊なシールドが展開されてからおよそ100年。街は今なお、病の脅威に怯え、特殊装備の「検査官」たちによって厳しく監視されています。感染判定が下された人々は、有無を言わさず連行され、二度と戻ることはありません。主人公の少女アビゲイル(ティナティン・ダラキシュヴィリ)は、感染者として連行された父が生きていると信じ、街の裏側を探る中で、魔法のような「特殊な力」を持つ能力者たちと出会います。彼女は彼らから「謎の病」に関する恐るべき真実と、街を覆うシールドの秘密を知らされ、父を取り戻すための危険な冒険に身を投じることになります。ファンタジーとスチームパンクの要素が融合した、壮大な世界観の作品です。
概要・原題
- 原題: Abigail (または Эбигейл)
- 公開年: 2019年(ロシア)
- 上映時間: 105分
- ジャンル: ディストピア、ファンタジー、アドベンチャー、スチームパンク
- 監督: アレクサンドル・ボグラフスキー(Aleksandr Boguslavskiy)
- 製作: エカテリーナ・コモル, セルゲイ・ヤクーボフ 他
あらすじ
どこかの異世界。死に至る謎の病が蔓延した結果、その感染拡大を防ぐ目的で巨大な特殊シールドが街を覆い、およそ100年が経過しました。しかし、病は依然として消えておらず、特殊装備の「検査官」が市民を厳しく監視しています。17歳の少女アビゲイルは、幼い頃に感染者として連行された父が、本当は生きていると信じ続けていました。ある日、彼女は検査官に追われる中で、普通の人間には見えないはずの「特殊な力」を発動させてしまいます。その力に導かれるように、アビゲイルは街の地下に潜む能力者たちのコミュニティと接触。彼らから、街を覆う「謎の病」やシールド、そして父の連行にまつわる恐るべき真実を聞かされます。それは、病が能力者たちを隠蔽するための偽装であり、シールドは能力を抑圧するための装置であるという事実でした。真実を知ったアビゲイルは、父を救い、閉ざされた世界の扉を開くため、仲間たちと共に体制に立ち向かうことを決意します。
キャスト
- アビゲイル: ティナティン・ダラキシュヴィリ(Tinatin Dalakishvili)
- アビゲイルの父: エディ・マーサン(Eddie Marsan)
- ノーマン: グレブ・ボチュコフ(Gleb Bochkov)
- ジョナサン: アルチョム・トカチェンコ(Artyom Tkachenko)
主題歌・楽曲
- 音楽: ライアン・オデル(Ryan O'Dell)
- 特記事項: 閉鎖的なディストピアの世界観を表現する重厚で神秘的なスコアと、アビゲイルの冒険を彩る壮大なオーケストラサウンドが特徴です。スチームパンク的な機械文明と魔法の力が共存する世界観に合わせた、独特な電子音や民族楽器の音色が使用されています。
受賞歴
- 本作は、その独創的な世界観と映像美が高く評価され、ファンタジー映画祭を中心に注目を集めました。特に、ロシア映画としては珍しい大規模なファンタジー・アドベンチャー作品として、その視覚効果や美術デザインが国内外で話題となりました。
撮影秘話
- この映画の最大の特徴であるスチームパンク調の閉ざされた都市のビジュアルは、緻密な美術セットと大規模なVFX(視覚効果)によって作り上げられました。
- 主演のティナティン・ダラキシュヴィリは、ディストピア世界に生きる孤独な少女が、自身の秘めた力に目覚めていく複雑な感情を見事に演じきっています。
- 監督のアレクサンドル・ボグラフスキーは、古典的なファンタジーの要素と、現代的なディストピア社会のテーマを融合させることに強いこだわりを持ち、ロシア映画界における新たなファンタジーの方向性を示しました。
感想
『アビゲイル クローズド・ワールド』は、その独特なスチームパンクの美術と、アビゲイルの特殊能力が絡み合う設定が非常に魅力的でした。街を覆うシールドの下で生活する人々の閉塞感と、アビゲイルが真実を知っていく過程のサスペンスが絶妙に組み合わされています。病と監視社会という重いテーマがありながらも、魔法と冒険の要素が加わることで、ワクワクしながら観られるエンターテイメントになっています。特に、能力者たちのクールなアクションシーンと、アビゲイルの父を巡る感動的なドラマは必見です。
レビュー
肯定的な意見
・「ロシア映画とは思えないほどの壮大なVFXと、緻密なスチームパンクの世界観が素晴らしい。」
・「ディストピアとファンタジーの融合が新鮮で、物語の真実に引き込まれる。」
・「アビゲイル役のティナティン・ダラキシュヴィリの美しさと芯のある演技が魅力的。」
否定的な意見
・「物語の設定が複雑で、説明不足に感じる部分がある。」
・「キャラクターの掘り下げが浅く、感情移入しにくい部分があった。」
考察
シールドが意味するもの
街を覆う巨大なシールドは、単なる隔離装置ではなく、能力者たちの力を抑圧するための象徴です。この病とシールドのシステムは、社会が「異質なもの」や「特別な力」を恐れ、排除しようとするディストピア社会の本質を体現しています。アビゲイルがシールドの真実を知り、自身の力を受け入れる過程は、抑圧された個性が自由と解放を求めるメタファーとして解釈できます。
父の存在と真実の継承
アビゲイルが冒険に挑む最大の動機は、連行された父への愛と、彼の無実を信じる心です。父が感染者ではなく、能力者であったという真実が判明することで、アビゲイルは自身の能力が父から受け継いだものであることを認識します。この物語は、単に父を救うという個人的な目標から、抑圧された能力者たち全体を救うという大きな使命へと、彼女の役割が変化していく成長の物語でもあります。
※以下、映画のラストに関する重大なネタバレが含まれます。
未視聴の方はご注意ください。
ラスト
アビゲイルは、能力者たちと協力し、ついに街の監視システムとシールドの破壊に成功します。彼女は、父が能力者たちのリーダーとして活動し、シールドのシステムに抵抗していたことを知ります。最終決戦では、アビゲイル自身の強大な特殊な力が覚醒し、シールドを維持していた悪の根源を打ち破ります。シールドが崩壊し、街は再び青空と外界の光を浴びることになります。アビゲイルは父との再会を果たし、能力者たちは自由を獲得します。彼らは、抑圧のない新しい世界で、能力を隠さずに生きていく未来を築くことになります。アビゲイルは、閉ざされた世界の「鍵」となり、真実のヒーローとして希望の光をもたらしました。
視聴方法
DVD&Blu-ray情報
まとめ
『アビゲイル クローズド・ワールド』は、ディストピア、スチームパンク、そしてファンタジーの要素を見事に融合させた、ロシア発の意欲的なアドベンチャー作品です。閉ざされた世界で真実を求める少女アビゲイルの旅は、個性の抑圧からの解放と、家族の絆の力を描いています。オリジナリティ溢れる世界観と、迫力あるアクションシーンは、見応え十分。単なるSF映画にとどまらない、希望と勇気の物語をぜひご覧ください。
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