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映画『約束の宇宙(そら)』:母と娘の絆を描く感動の物語。宇宙飛行士の過酷な訓練と別れの葛藤

 

映画『約束の宇宙(そら)』:母と娘の絆を描く感動の物語。宇宙飛行士の過酷な訓練と別れの葛藤

映画 約束の宇宙(そら) のポスター

エヴァ・グリーン主演。欧州宇宙機関ESA)を舞台に、宇宙飛行士としての夢と、母親としての愛の間で揺れ動く女性の姿をリアルに描いたヒューマンドラマ。監督はアリス・ウィンクール。実際にESAの施設内で撮影が行われ、宇宙飛行士が直面する身体的・精神的な極限状態が鮮明に映し出されています。

 

 

 

 

概要・原題

 

  • 原題: Proxima
  • 公開年: 2019年(日本公開2021年)
  • 上映時間: 107分
  • ジャンル: ドラマ
  • 監督: アリス・ウィンクール
  • 脚本: アリス・ウィンクール、ジャン=ステファヌ・ブロン

 

あらすじ

 

フランス人宇宙飛行士のサラは、長年の夢であった国際宇宙ステーションISS)への滞在任務「プロキシマ」のクルーに選出されます。しかし、それは7歳の愛娘ステラと約1年間という長い離別を意味していました。ロシアの星の街での過酷な訓練が始まる中、サラは男性優位の現場で厳しい要求に晒されながら、母親としての罪悪感とも戦うことになります。ステラは母との別れを寂しがり、二人の関係には微妙な亀裂が生じ始めます。ロケット打ち上げが迫る中、サラは娘と「打ち上げ前に二人で本物のロケットを見に行く」という約束を交わします。しかし、厳重な検疫隔離が行われる出発直前、その約束を守ることは物理的に不可能な状況へと追い込まれていくのでした。

 

キャスト

 

  • サラ・ロア=ルヴォー: エヴァ・グリーン
  • マイク・シャノン: マット・ディロン
  • ウェンディ・ハンス: ザンドラ・ヒュラー
  • トーマス・アッカーマン: ラース・アイディンガー
  • ステラ: ゼリー・ブーラン・レメル

 

主題歌・楽曲

 

  • 音楽: 坂本龍一
  • 楽曲の特徴: 日本が誇る巨匠・坂本龍一が音楽を担当。宇宙の静寂と、地上に残される家族の繊細な感情を、ミニマルながらも深い広がりを感じさせるピアノと電子音で表現しています。

 

受賞歴

 

 

撮影秘話

 

  • 本作は欧州宇宙機関ESA)の全面協力のもと、ドイツのケルンにある欧州宇宙飛行士センター(EAC)や、ロシアの星の街(スター・シティ)、カザフスタンのバイコヌール宇宙基地でロケが行われました。
  • 主演のエヴァ・グリーンは、実際に宇宙飛行士が行う訓練を数ヶ月間にわたって体験し、身体的な変化や疲労感を役作りに取り入れました。
  • 監督のアリス・ウィンクールは、NASAESAの女性宇宙飛行士たちに取材を重ね、彼女たちが直面する「家庭と仕事の板挟み」という現実的な課題を脚本に反映させました。

 

感想

 

これまでの宇宙映画とは一線を画す、非常にパーソナルで静かな作品です。宇宙へ飛び立つことの輝かしさよりも、そこに至るまでの血の滲むような努力や、愛する人を置いていく痛みの方に焦点が当てられています。エヴァ・グリーンの抑えた演技が素晴らしく、ラストシーンの静かな感動は、多くの母親だけでなく、夢を追うすべての人に響くものがあります。

 

レビュー

 

肯定的な意見

・SFではなくヒューマンドラマとして一級品。母娘の絆が丁寧に描かれている。

坂本龍一の音楽が映像の美しさと心理描写を完璧に補完している。

・実際の宇宙飛行士訓練施設での撮影によるリアリティが圧倒的で、没入感がある。

 

否定的な意見

・派手なアクションや宇宙空間での危機を期待すると、展開が地味に感じるかもしれない。

・中盤の訓練シーンが長く、テンポが遅いと感じる部分があった。

 

考察

 

スーパーヒーローではない等身大の宇宙飛行士

本作のサラは、特別な超能力や驚異的な身体能力を持つ英雄としてではなく、一人の人間、そして一人の母親として描かれています。彼女が流す涙や、娘を思うがゆえの迷いは、プロフェッショナルであることと人間であることのバランスを問いかけています。この「弱さ」を隠さない描写こそが、観客に深い共感を与えています。

 

重力からの解放と絆の重さ

宇宙へ行くためには重力を振り切らなければなりませんが、本作において重力は「地球に残す娘との絆」のメタファーとして機能しています。サラが訓練で身体にかかる負荷(G)に耐える姿は、ステラと離れる精神的な重圧に耐える姿と重なります。物理的な重力から解放される宇宙空間へ向かう一方で、心の重力はより強まっていくという対比が印象的です。

 

 

※以下、映画のラストに関する重大なネタバレが含まれます。
未視聴の方はご注意ください。

 

ラスト

 

打ち上げ前夜、サラは検疫のための隔離規則を破るという重大な決断を下します。彼女は深夜、密かに隔離施設を抜け出し、娘ステラを連れ出して暗闇の中にそびえ立つ本物のロケットを見せに行きました。それは、母娘の間にあったわだかまりを解消し、約束を果たすための命がけの行動でした。無事に施設に戻ったサラは、翌朝、清々しい表情でロケットに乗り込みます。発射場で見守るステラの目の前で、サラを乗せたロケットは轟音と共に宇宙へと飛び立っていきました。ISSに到着したサラは、窓から見える地球の美しさをステラに伝えます。離れていても心がつながっていることを確認し、二人の新しい旅が始まることを示唆して物語は幕を閉じます。エンドロールでは、実在の女性宇宙飛行士たちが子供たちと過ごす写真が次々と映し出され、この物語が現実の多くの女性たちの苦闘と誇りに裏打ちされていることが示されます。

 

視聴方法

 

 

DVD&Blu-ray情報

 

ハピネット・ピクチャーズよりBlu-rayとDVDが好評発売中。特典映像として、アリス・ウィンクール監督のインタビューや、実際のESA施設でのメイキング映像が収録されており、映画のリアリティを支える裏側を深く知ることができます。

 

 

 

 

まとめ

 

『約束の宇宙(そら)』は、単なる宇宙開発の物語ではなく、一人の女性が「母」と「夢」という二つのアイデンティティを統合していく再生の物語です。坂本龍一による繊細な旋律と、ESA全面協力による圧倒的な実在感が、この私的なドラマを普遍的な感動へと昇華させています。家族との距離感に悩むすべての人におすすめしたい一本です。

 

映画のジャンル

 

ヒューマンドラマ、ファミリー