映画『ゾンビーズ』:近未来のゾンビ・パニック!極悪企業に立ち向かう若者たちの破天荒な戦い

ターボ・キッドの監督トリオ、RKSS(アヌーク・ウィッセル、フランソワ・シマール、ヨアン=カール・ウィッセル)が放つ、エネルギッシュで独創的なゾンビ・アクション映画が登場しました。近未来のディストピアを舞台に、誘拐された最愛の祖母を救うため、3人の若者がゾンビの群れと極悪企業に立ち向かいます。本作最大の特徴は、一般的なゾンビ映画のような知性のない怪物ではなく、独自の生態を持つゾンビの設定にあります。レトロフューチャーな世界観と、過激ながらもどこかコミカルな演出が光る本作を詳しく紹介します。
概要・原題
- 原題: We Are Zombies
- 公開年: 2023年(日本公開は2024年)
- 監督: ヨアン=カール・ウィッセル、フランソワ・シマール、アヌーク・ウィッセル(RKSS)
- 脚本: ヨアン=カール・ウィッセル、フランソワ・シマール、アヌーク・ウィッセル
- 原作: ジェリー・フランセン、ギ・ロドリゲスによるグラフィック・ノベル
- 出演: アレクサンドル・ナチ、デレク・ジョーンズ、ミーガン・ペータ・ヒル
あらすじ
舞台は近未来、ゾンビが日常の中に存在する奇妙な世界。ここではゾンビたちはカニバルゾンビと呼ばれながらも、生前と変わらぬ知性を持ち、徘徊こそすれど人間を積極的に襲うことはないという、従来のゾンビ像を覆す存在として描かれています。しかし、社会からは疎まれ、死ぬこともできない厄介者として扱われていました。ゾンビ・ポルノに心酔するカール、レスリングに情熱を注ぐフレディ、そしてカールの異母姉であるマギーの3人は、ゾンビを回収しては闇市場で売るという日銭稼ぎをしていました。そんなある日、彼らの大切な祖母が、街を牛耳る極悪大企業コールマン社に誘拐されてしまいます。3人は祖母を取り戻すため、ゾンビの群れとコールマン社の武装組織が待ち受ける危険な戦いへと身を投じます。
キャスト
- カール: アレクサンドル・ナチ。ゾンビに対して異常な関心を持ち、ゾンビ・ポルノを愛好する風変わりな青年。
- フレディ: デレク・ジョーンズ。カールの友人で、プロレスラーになることを夢見る熱血漢。
- マギー: ミーガン・ペータ・ヒル。カールの異母姉で、3人組の中で最も冷静で行動力のあるリーダー的存在。
- コールマン社の幹部: 冷酷非道な手段でゾンビを利用し、利益を追求する物語のヴィラン。
主題歌・楽曲
- RKSS作品特有のシンセサイザーを多用した80年代風のスコアが、近未来のディストピア感を引き立てています。ポップで軽快なメロディと、グロテスクな映像のコントラストが独特のグルーヴを生み出しています。
受賞歴
- ファンタジア国際映画祭をはじめとする世界各国のファンタスティック映画祭で上映され、その独創的なプロットと視覚効果が高く評価されました。ジャンル映画愛好家からの熱烈な支持を得ています。
撮影秘話
- 監督のRKSSは、原作のグラフィック・ノベルの世界観を忠実に再現するため、小道具やセットのデザインに細部までこだわりました。特にゾンビのメイクアップは、単なる死体ではなく、生活感のある奇妙な存在として描かれています。
- 低予算ながらも、工夫を凝らした実写エフェクトと特殊造形により、CGに頼らない肉体的な迫力を持つアクションシーンが数多く制作されました。
感想
ゾンビ映画という枠組みを使いながら、これほどまでに新鮮な驚きを与えてくれる作品は稀です。ゾンビを恐怖の対象ではなく、社会から排除された弱者や、あるいは日常のノイズとして描く視点が非常に面白いです。3人組の掛け合いはコミカルでテンポが良く、特にゾンビ・ポルノ好きという極端なキャラクター設定が、物語にブラックなユーモアを添えています。グロテスクな表現はしっかりありつつも、読後感ならぬ鑑賞後の感覚は爽快で、監督たちのジャンル愛がひしひしと伝わってくる一本です。
レビュー
肯定的な意見
・ゾンビが人を襲わないという設定が斬新。現代社会の風刺としても機能している。
・ターボ・キッドが好きなら間違いなくハマる。レトロな音楽とDIY精神溢れる特殊メイクが最高。
・キャラクターが立っていて、3人の冒険を最後まで楽しく見届けることができた。
否定的な意見
・設定は面白いが、ストーリーの展開がやや強引に感じる部分があった。
・ブラックユーモアが強すぎて、好みが分かれるかもしれない。
・もっと本格的なサバイバル・ホラーを期待している人には物足りない可能性がある。
考察
従来のゾンビ像を打破するカニバルゾンビの設定
本作におけるゾンビは、食人衝動を持たないどころか、意識を持って会話すら可能な存在として描かれます。これは従来のゾンビ映画が定義してきた生ける屍という概念を逆手に取ったものです。彼らは死ぬことができない存在として、資本主義社会の中で資源や労働力、あるいは搾取の対象として扱われています。この設定は、社会におけるマイノリティや高齢者、浮浪者といった層を象徴しているとも読み取れ、極悪企業コールマン社による搾取は、現代の格差社会への強烈な皮肉となっています。
RKSSが描く家族愛と絆
バラバラな個性を持ちながら、誘拐された祖母のために命を懸けるカールたちの行動原理は、血縁を超えた家族の絆に基づいています。異母姉弟や友人という関係性が、共通の敵を前に強固な連帯へと変わっていく過程は、暴力的な描写の中に温かみのある人間ドラマを形成しています。
※以下、映画のラストに関する重大なネタバレが含まれます。
未視聴の方はご注意ください。
ラスト
コールマン社の本社に乗り込んだカール、フレディ、マギーの3人は、会社がゾンビを原料とした新製品の開発や、人体実験を行っていた凄惨な実態を暴きます。そこではゾンビを非生存者から凶暴なゾンビに変身させる薬が開発されていました。3人はおばあちゃんを発見します。しかし、おばあちゃんは今まで非生存者であると嘘をついていましたが、誘拐犯に誤射されたことで、本当に非生存者(ゾンビ)になってしまっていました。激しい銃撃戦とフレディのプロレス技による肉弾戦を経て私設部隊を撃破した彼らは、おばあちゃんを連れて脱出に成功します。その後、彼らはいつもの生活に戻ったかのように見えました。いつものダイナーで食事をする3人の姿がありましたが、平穏な時間は長くは続きませんでした。ダイナーの窓の外には、薬の影響なのか、これまでとは違う凶暴で人喰いになったゾンビたちが群がっているのが見えます。平穏だった奇妙な日常が、本物の絶望的なゾンビパニックへと変貌したことを示唆して物語は幕を閉じます。
視聴方法
DVD&Blu-ray情報
国内盤Blu-rayでは、RKSSファン垂涎のメイキング映像や、過激なシーンの制作過程を追ったドキュメンタリーが特典として収録されています。独特の美術設定をより深く知ることができるファン必携のアイテムです。
まとめ
映画『ゾンビーズ』は、既存のホラー映画のジャンルを解体し、独自のユーモアと美学で再構築した快作です。ゾンビを食人鬼ではなく、哀愁漂う隣人のように描くことで、新たな恐怖と笑いの形を提示しました。極悪企業に立ち向かう3人の若者の姿は、不条理な世界を生き抜く私たちへのエールとも取れます。過激な描写に耐性があるなら、この奇妙で愛すべき近未来の物語をぜひその目で確かめてみてください。
映画のジャンル
ゾンビ・コメディ、SF、アクション、ホラー、カルト映画
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