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映画『終わりの鳥』:ダイナ・O・プスィッチ監督。A24が放つ、死を司る喋る鳥と余命わずかな少女、そして別れを拒む母親の葛藤を描いた、美しくも奇妙な感動ファンタジー

 

映画『終わりの鳥』:ダイナ・O・プスィッチ監督。A24が放つ、死を司る喋る鳥と余命わずかな少女、そして別れを拒む母親の葛藤を描いた、美しくも奇妙な感動ファンタジー

映画 終わりの鳥のポスター

2023年に世界初公開され、2024年に各地で公開された映画が『終わりの鳥』(原題:Tuesday)です。新鋭ダイナ・O・プスィッチ監督の長編デビュー作であり、映画界に常に新しい風を吹き込むA24が手掛けた本作は、死そのものの概念を驚くべき造形で描き出しました。15歳にして余命わずかな少女チューズデーと、彼女の元へ現れた変幻自在でイケボの喋る鳥。そして娘を愛するがゆえに常軌を逸した暴挙に出る母親ゾラの姿を通して、誰もがいつかは向き合い、受け入れなければならない死の真実を、幻想的かつ感動的なファンタジーとして描き出します。衝撃的な展開と、絵本を読んでいるかのような美しい映像美の裏に隠されたメッセージを徹底解説します。

 

 

 

 

概要・原題

 

  • 原題:Tuesday
  • 公開年:2023年(世界初公開)、2024年(米国等一般公開)
  • 上映時間:111分
  • ジャンル:ファンタジー、ドラマ
  • 監督・脚本:ダイナ・O・プスィッチ
  • 製作国:アメリカ、イギリス
  • 配給:A24

 

あらすじ

 

車椅子生活を送り、重い難病のため余命わずかな15歳の少女チューズデー。彼女の母親ゾラは、愛する娘の死期が近づいているというあまりにも過酷な現実を受け入れることができず、精神的に追い詰められていました。ゾラは現実から目を背けるように、自宅を留守にしては身の回りの品を売り払って治療費を稼ごうとするなど、娘の傍にいることすら避ける日々を送っていました。ある日、チューズデーが一人で庭にいると、目の前に巨大な鳥が舞い降ります。その鳥は、喋ることも歌うこともでき、さらに体の大きさを自在に変える不思議な能力を持っていました。彼の正体は、この地球上で生きるすべての生きものに最期(死)をもたらす存在、デスでした。人々が死を恐れ嫌うあまり、デスは常に無数の苦痛の声に悩まされ、体は泥と煤でひどく汚れきっていました。しかし、死を恐れずに受け入れたチューズデーは、彼を優しく迎え入れます。彼女はデスにジョークを言って笑わせ、お気に入りの音楽を聴かせ、さらに彼の汚れきった体を風呂で優しく洗ってあげます。チューズデーのあたたかい行為によってデスの心に潜む穢れは落ち、頭の中の騒音も消え、彼は本来のきれいな姿を取り戻します。二人の間に静かな友情が芽生え、デスはチューズデーの最期を看取る前に、母親ゾラが帰宅してちゃんとお別れをする時間を引き延ばすという願いを聞き入れ、一日を共に過ごします。やがて帰宅したゾラは、娘のそばにいる異形な鳥を見て激しい畏怖とおののきを覚えます。そして、娘を死から強引に遠ざけようとする一心で、デスを欺いて庭に連れ出すと、重い本で何度も叩きつぶし、火を放ち、さらにはデスを自分の体内に取り込むために食べてしまうという、とんでもない暴挙に出るのでした。

 

キャスト

 

  • ゾラ(母親):ジュリア・ルイス=ドレイファス
  • チューズデー(娘):ローラ・ペティクルー
  • デス/死(声):アリンゼ・ケニ
  • 看護師ビリー:レアー・ハーヴィー
  • ウィロウ:エリー・ジェームズ
  • アイラ:タル・デヴァニ

 

主題歌・楽曲

 

  • 音楽:アン・メレディス
  • 特記事項:本作を美しく彩る音楽は、アン・メレディスによる静かで繊細なオーケストラサウンドが使用されています。劇中でチューズデーがデスに聴かせるお気に入りの音楽として、アイス・キューブのグッド・デイが重要な役割を果たしており、古典的な死のイメージをポップかつシュールに覆す演出として、強烈な印象を観客に与えます。

 

受賞歴

 

  • テリュライド映画祭やロンドン映画祭といった数々の権威ある国際映画祭で正式上映され、その高い美術性とジュリア・ルイス=ドレイファスの熱演が批評家たちから絶賛されました。
  • ダイナ・O・プスィッチ監督の長編デビュー作として、独創的な世界観を構築した手腕が高く評価され、今後の映画界を担う新たな才能として注目を浴びました。

 

撮影秘話

 

  • 本作の主役ともいえるデス(死の鳥)の描写は、精巧なアニマトロニクス(ロボット)技術、パペット操作、そして最先端のコンピュータ・グラフィックスを完璧に融合させて撮影されました。これにより、インコ(コンゴウインコ)のような親しみやすさと、死を司る圧倒的な不気味さを両立した魅力的な造形が誕生しました。
  • デスの声を担当したアリンゼ・ケニは、その深い響きと、どこか物悲しさを帯びたイケボを見事に演じ分け、単なる怪物ではない、知的で苦労人なキャラクターに命を吹き込みました。
  • 主演のジュリア・ルイス=ドレイファスは、娘の死に直面する母親の狂気と深い愛情を演じきるため、自身のキャリアの中でも最もドラマチックで体当たりの演技に挑戦し、現場でも高い集中力を維持し続けました。

 

感想

 

死を視覚化し、キャラクターとして表現する手法は古くから多くの映画で用いられてきましたが、本作のように魅力的な、少し癖のあるインコにしてしまった発想はとても思い切りが良く、新鮮でした。人々から忌み嫌われるせいで、最初は薄汚れて人々の叫び声に常に怯えていたデスが、死を恐れないチューズデーの優しさに触れてきれいになっていく過程は、まるで美しい絵本を読んでいるかのようで、死というテーマでありながら悲しくない、とてもあたたかい気持ちにさせてくれます。鳥(死)、少女、母親の3人による静かで閉鎖的な会話劇かと思いきや、母親のゾラがデスを踏みつぶし、焼き、さらには自分の体内に閉じ込めるために食べてしまうという中盤の展開には心底驚かされました。ゾラは最初は共感しにくい利己的な母親に見えるかもしれませんが、世界を巻き込む大混乱と娘との関わりを経て、最終的に死を受け入れて立ち上がる結末は非常にエモーショナルで、今の時代を生きるすべての人に届く優しいメッセージを持っていました。恐ろしくない、むしろどこか哀愁漂うデスのキャラクターが本当に素晴らしかったです。

 

レビュー

 

肯定的な意見

・死を怖がらせるためのモンスターとしてではなく、一つの普遍的な役割を持った存在として描く視点が非常に温かく、美しい。

・チューズデーとデスが対話する前半の静寂と、母親の暴挙によって世界中がパニックに陥る後半の展開のギャップが面白く、最後まで予測がつかない。

・ジュリア・ルイス=ドレイファスの圧倒的な熱演が、ファンタジーの設定にリアルな家族愛の重みを与えている。

否定的な意見

・母親が死の鳥を踏みつぶし、焼き、食べるという展開はかなり衝撃的で、人によってはホラー的な不快感を覚えるかもしれない。

・ファンタジーやシュールな演出が強いため、よりストレートで現実的な闘病記やヒューマンドラマを求めている人には好みが分かれる部分がある。

 

考察

 

死の穢れとチューズデーの受容がもたらす浄化

本作においてデスが最初に薄汚れた羽毛をまとってみすぼらしい姿で現れるのは、人類が死に対していかに強い拒絶と恐怖、そして憎しみを抱いてきたかを視覚的に象徴しています。彼は世界中の断末魔や苦痛の声を頭の中で聴き続けており、それが穢れとなって彼の体を汚していました。しかし、余命いくばくもないチューズデーは、彼を敵視することなく優しくお風呂に入れ、ジョークを交えて対話します。この無垢な受容によってデスの心に静寂が訪れ、本来の美しい姿に戻る描写は、死そのものが悪なのではなく、人間が死をどのように捉えるかによってその性質が変わることを示唆しています。

 

母親ゾラの暴挙が証明する死という不可避の救済

娘の最期を受け入れることができないゾラは、デスを殺して食べることで死そのものを消滅させようとします。その結果、翌朝から世界中で誰も死ぬことができないという未曾有の混乱が発生します。どれほど悲惨な事故に遭っても命を失うことができず、人々や動物はただ痛みに苦しみながらゾンビのように徘徊することになるのです。このブラックユーモアあふれる展開は、死が人生の不条理なバッドエンドではなく、すべての生きものに平穏と最後の安らぎ(苦痛からの解放)をもたらすために必要不可欠なシステムであることを、逆説的に証明しています。

 

原題Tuesdayに込められた「日常としての死」

本作の原題であるTuesdayは、少女の名前であると同時に、週の中日のありふれた火曜日を指しています。これは、死というものがドラマチックな一大イベントではなく、すべての生きものにとっていつかは等しく訪れる日常の延長線上のものであることを示しています。死に抗って世界を壊すのではなく、死をどのように看取り、残された者がどのように受け入れて立ち上がっていくか。このシンプルですが力強いテーマを、本作は圧倒的な映像センスで伝えています。

 

 

※以下、映画のラストに関する重大なネタバレが含まれます。
未視聴の方はご注意ください。

 

ラスト

 

デスを体内に取り込んでしまったゾラ。世界中で死が消失したことで、重症を負った動物や人々が命を終えることができずに彷徨う大混乱が生じます。さらに、デスを体内に宿したゾラは、娘から激しい追及を受けるなどの強いストレスを受けると、自らの体を急激に巨大化させてしまうという異変に見舞われます。チューズデーは、死が失われたことでもたらされた世界の悲惨な光景を母親に見せ、自分たちがデスの代わりに代理の死神となって、苦痛に喘ぐ者たちに最後の安らぎを与えなければならないと説得します。ゾラは娘と共に、本来デスが果たすべきだった「終わりの儀式」を実行し、世界に死の救済を取り戻していきます。しかし、逃れられない最後の時はチューズデー自身にも訪れます。ゾラは涙を流しながら、娘の死をこれ以上引き延ばすことは彼女を余計に苦しめるだけであり、彼女を安らかに送り出すことこそが本当の愛であるとついに理解します。ゾラはチューズデーを抱きしめ、彼女が静かに息を引き取るのを受け入れました。チューズデーの死後、深い喪失感に暮れるゾラの前に、再び元の姿に戻ったデスが現れます。ゾラは絶望から自分も死んだ方が良いのではないかとこぼしますが、デスは彼女に「もし生きるための理由が必要なら、それはチューズデーの思い出をあなたの中で生き続けさせることだ」と優しく諭します。ゾラは深く息を吐き出し、自分自身に「立ち上がりなさい、女よ」と言い聞かせ、悲しみを背負いながらも前を向いて歩き出す決意を固めるところで物語は幕を閉じます。誰もが死を避けられないからこそ、受け入れる瞬間に安らかでありたいという、親子の深い心の旅路を描いた感動的な結末でした。

 

視聴方法

 

 

DVD&Blu-ray情報

 

映画『終わりの鳥』のパッケージ版には、A24作品ならではの美しいビジュアルブックや、監督ダイナ・O・プスィッチが自ら語る「死をインコとして表現した意図」を追った詳細な解説ドキュメンタリーが収録されています。また、巨大なデスのパペットや特殊効果の裏側、アニマトロニクスがどのように操作されてあの表情豊かな動きが生み出されたのかといった貴重なメイキング映像も収録されており、ダーク・ファンタジーや特撮・VFX技術に興味があるファンにはたまらない充実の内容となっています。高精細な映像で、デスの羽の一枚一枚の質感まで鮮明に楽しむことができます。

 

 

終わりの鳥 [DVD]

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  • ジュリア・ルイス=ドレイファス
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まとめ

 

映画『終わりの鳥』は、死をモチーフにしながらも、悲しみを超えた優しさと愛を私たちに提示してくれる至高のファンタジードラマです。死の鳥を食べてしまうという常軌を逸した展開に驚かされつつも、最後には「どう向き合い、受け入れ、再び立ち上がるか」という、遺された者の普遍的なテーマが鮮やかに胸に響きます。死を怖がらず安らかに受け入れることの大切さと、旅立った者の思い出を胸に生き抜く強さ。ダイナ・O・プスィッチ監督が紡いだ、どこかユーモラスで哀愁に満ちたこの「終わりの鳥」と親子の物語を、ぜひその目で見届けてみてください。

 

映画のジャンル

 

ファンタジー、ドラマ、ファミリー

  • 終わりの鳥
  • Tuesday
  • ダイナ・O・プスィッチ
  • ジュリア・ルイス=ドレイファス
  • ローラ・ペティクルー
  • A24
  • 死神
  • 感動ファンタジー