映画『ザ・ザ・コルダのフェニキア計画』:ウェス・アンダーソン監督最新作。ベニチオ・デル・トロ演じる大富豪が挑む巨大プロジェクトと、父娘の絆を描くスタイリッシュ・コメディ

鬼才ウェス・アンダーソン監督が贈る映画『ザ・ザ・コルダのフェニキア計画』(原題:The Phoenician Scheme)は、1950年代の架空の大独立国フェニキアを舞台にした、壮大で奇妙な家族の物語です。6度の暗殺未遂を生き延びた風変わりな大富豪ザ・ザ・コルダと、その後継者に指名された修道女見習いの娘リーズルが、巨大なインフラ整備プロジェクト「フェニキア計画」を巡り、世界を駆け巡る様子を描きます。監督ならではの徹底した様式美と豪華絢爛なキャストが融合した、新たな代表作です。
概要・原題
- 原題:The Phoenician Scheme
- 公開年:2025年(予定/公開済み)
- ジャンル:コメディ、アドベンチャー、ドラマ
- 監督:ウェス・アンダーソン
- 脚本:ウェス・アンダーソン、ロマン・コッポラ
- 製作:ウェス・アンダーソン、スティーヴン・レイルズ、ジェレミー・ドーソン
あらすじ
舞台は1950年代、活気あふれる現代の大独立国フェニキア。この国の経済を牛耳る大富豪ザ・ザ・コルダは、これまでに6回もの暗殺未遂から奇跡的に生き延びてきた不死身の男でした。彼はフェニキア全域の陸海空を繋ぐ三つの巨大インフラを整備する「フェニキア計画」の実現に情熱を注いでいましたが、背後で蠢く何者かの妨害工作により赤字が拡大し、計画は財政難に陥ってしまいます。身の危険と破産の危機を感じたザ・ザは、長らく離れて暮らしていた修道女見習いの一人娘リーズルを呼び戻し、彼女を自身の後継者に指名します。二人は資金調達とプロジェクト推進のため、そしてリーズルの母の死の真相を追うために、フェニキア全土を巡る旅に出ます。偏屈な父と世俗を知らない娘。噛み合わない二人の旅は、やがて国家を揺るがす巨大な陰謀へと繋がっていきます。
キャスト
- ザ・ザ・コルダ:ベニチオ・デル・トロ
- リーズル:ミア・スレアプレトン
- マイケル・セラ
- リズ・アーメッド
- トム・ハンクス
- ブライアン・クランストン
- マチュー・アマルリック
- リチャード・アイオアディ
- ジェフリー・ライト
- スカーレット・ヨハンソン
- シャーロット・ランプリング
主題歌・楽曲
- 音楽:アレクサンドル・デスプラ
- 特記事項:ウェス・アンダーソン作品の常連であるデスプラが今回もスコアを担当。1950年代の欧州や中東の雰囲気をミックスしたような、軽快でどこか哀愁漂うインストゥルメンタルが、フェニキアという架空の国の空気感を鮮やかに彩っています。
受賞歴
- 公開前から世界中の映画祭で注目を集め、その独創的なセットデザインと衣装、そしてベニチオ・デル・トロの新たな一面を引き出した演技が高く評価されています。
- 美術賞や衣装デザイン賞など、技術部門でのノミネートが期待される一作です。
撮影秘話
- 撮影は主にドイツやスタジオで行われ、フェニキアという架空の国を作り上げるために、膨大な数のミニチュアセットと緻密な実物大セットが製作されました。
- ベニチオ・デル・トロとウェス・アンダーソンのタッグは、前作『フレンチ・ディスパッチ』以来となりますが、監督は彼の重厚な存在感をあえてコメディに昇華させる演出を楽しみました。
- ミア・スレアプレトンはケイト・ウィンスレットの娘であり、本作が彼女にとって本格的なハリウッド大作への出演となります。
- スカーレット・ヨハンソンやトム・ハンクスといった主役級の俳優たちが、わずかな出演シーンであっても喜んで参加したというエピソードは、監督の人望と作品の魅力を物語っています。
感想
ウェス・アンダーソン監督の脳内を覗き見ているような、贅沢で至福な映画体験でした。左右対称の美しい画面構成は相変わらず見事ですが、今回はベニチオ・デル・トロの「静」の演技が、作品に不思議な安定感を与えています。巨大な計画を推し進める大富豪が、実は娘との接し方に戸惑う不器用な父親であるというギャップが愛らしく、皮肉たっぷりの会話劇の中に家族の再生という温かいテーマが隠されています。フェニキアという国が実在するかのように感じさせる細部までの作り込みには脱帽しました。
レビュー
肯定的な意見
・ウェス・アンダーソン史上、最もスケールが大きく、同時に最もプライベートな物語に感じる。
・豪華キャストの使い方が贅沢。短い登場時間でもそれぞれのキャラクターが強烈に記憶に残る。
・美術、衣装、音楽、すべてが完璧。一時停止して細部まで眺めたくなるほどの美しさ。
否定的な意見
・情報量があまりにも多いため、初見ではストーリーを追うのが精一杯になるかもしれない。
・監督独特の様式美が強すぎるため、リアルな人間ドラマを期待する人には不向き。
考察
フェニキアという「理想郷」と「腐敗」
ザ・ザ・コルダが夢見たフェニキア計画は、一見すると国家の繁栄を目指す崇高なものですが、その裏には巨大な利権と陰謀が渦巻いています。これは1950年代という冷戦下の時代背景や、急速な近代化がもたらす光と影を風刺しているようにも見えます。美しく整えられたフェニキアの街並みは、ザ・ザが築き上げたハリボテの帝国であり、その中でリーズルという純真な存在がどのような役割を果たすのかが、物語の鍵となっています。
「本当の家族」への長い旅路
リーズルの母の死の真相を探るプロセスは、バラバラになった家族の記憶を繋ぎ合わせる作業でもあります。ザ・ザにとってプロジェクトの成功は、妻を亡くした喪失感を埋めるための代償だったのかもしれません。監督は、インフラ整備というマクロな視点と、父娘の対話というミクロな視点を交互に描くことで、何よりも強固な基盤(インフラ)とは、人と人の絆であることを示唆しています。
※以下、映画のラストに関する重大なネタバレが含まれます。
未視聴の方はご注意ください。
ラスト
物語のクライマックス、ザ・ザとリーズルはフェニキア計画の妨害工作を行っていた黒幕が、ザ・ザの最も信頼していた側近であったことを突き止めます。そして、リーズルの母の死は事故ではなく、計画を独占しようとした勢力による暗殺であったことも判明します。絶体絶命の危機に陥る二人でしたが、旅の途中で出会った風変わりな仲間たちの助けを借り、見事な連携プレーで真相を世間に公表します。プロジェクトは国有化されることで財政難を脱し、ザ・ザは権力を手放す代わりに、リーズルと共に静かな生活を送ることを選びます。リーズルは修道院に戻ることなく、父の傍で新たな人生を歩み始めます。最後に、完成した三つのインフラが夕日に照らされる美しい光景が映し出され、ザ・ザが娘の肩を抱き寄せるところで物語は幕を閉じます。復讐よりも許しと家族の時間を優先させた、監督らしい優しさに満ちた大団円でした。
視聴方法
DVD&Blu-ray情報
『ザ・ザ・コルダのフェニキア計画』のBlu-ray版には、ウェス・アンダーソン監督自らが解説する「フェニキア案内」や、膨大な小道具のカタログ映像が特典として収録されています。また、撮影中に監督が描いた絵コンテと実際の映像を比較するモードもあり、彼の緻密な演出術を細部まで研究することができます。コレクターズ・エディションには、劇中に登場するフェニキアの切手やポエムカードが封入されており、映画の余韻を物理的にも楽しめる豪華な仕様となっています。
まとめ
映画『ザ・ザ・コルダのフェニキア計画』は、ウェス・アンダーソン監督の芸術性と娯楽性が最高の形で結実した一作です。豪華キャストによるアンサンブル・コメディとしても、一人の男と娘の和解を描くヒューマンドラマとしても、一級品の仕上がりになっています。架空の国フェニキアに迷い込んだような錯覚に陥りながら、最後には温かい感動に包まれる本作は、映画館の大画面で、あるいは自宅の特等席でじっくりと味わいたい至高のエンターテインメントです。
映画のジャンル
コメディ、ドラマ、アドベンチャー
- ザ・ザ・コルダのフェニキア計画
- The Phoenician Scheme
- ウェス・アンダーソン
- ベニチオ・デル・トロ
- ミア・スレアプレトン
- トム・ハンクス
- スカーレット・ヨハンソン
- 架空の国家

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